接遇・おもてなしレター
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接遇が良い歯科衛生士とクレームを受ける歯科衛生士の違い
歯科医院は、スタッフの対応一つで患者様の印象は大きく変わります。特に、問診から診療室を出られるまで患者様と接する時間が一番長い歯科衛生士の接遇マナーは、治療そのものよりも重要だと言っても過言ではありません。今回は、接遇が良い歯科衛生士とクレームを受けやすい歯科衛生士の違いについてお伝えします。
患者様が歯科医師(ドクター)に求めているものは、痛い部分を治してくれる『腕』ですが、歯科衛生士に求めているものは『安心感』です。安心感が大きければ大きいほど、その医院に対する信頼感も強くなります。
接遇の良い歯科衛生士は、以下に挙げるような「温もりのある対応」で患者様に安心感を提供しています。
患者様が口に出さないこと、もしくは患者様自身も気が付いていない部分にまで気を配ることで、温もりのある患者対応を実現することができます。基本的な例としては、妊婦さんやご老人がユニットに座る際には腰の部分にクッションを当てる、移動が辛そうであれば手を差し伸べるなど。また、診療中にドクターが席を外したときに、痛みはないか、ほかに希望はないか、親身になって会話をすることも大切です。患者様の中には、仮に言いたいことがあっても我慢している方も多くいます。衛生士が患者様の本心を引出し、ドクターに伝えることで、患者様が本当に必要としている治療を提供することができるのです。
定期健診にいらした患者様の歯肉の状態が悪くなっており、ブラッシング指導をした時のこと。ちゃんと歯磨きしていたつもりだったのに…と少し落ち込み気味だったので、少し気が紛れればとお話しをしていたところ、実はもの凄いストレスを抱えていたことが分かったのです。歯肉の状態が悪化していたのは、ブラッシングだけではなくストレスの影響もあるのかもしれません、とお伝えすると、少しほっとしたような表情をされていました。『あれがダメ、これがダメと指摘されるばかりでなく、ほかの原因も一緒に考えてくれたことが嬉しい』とのお言葉を頂きました。
患者様が気軽に自分の気持ちを言える診療体制や、親身になって患者様の状態を気に掛けるスタッフがいてこそ、安心して通院できる医院として患者様に選ばれるのです。
来院される患者様のほとんどは治療を受けることに不安を感じており、歯科衛生士のちょっとした態度も敏感に感じ取ってしまうものです。その中でも無愛想な対応や事務的な態度などにはクレームがつきやすく、その原因として歯科衛生士の余裕の無さが根本にあると考えられます。
新人に多いのが、怒られないような仕事を目指すために、患者様に不快感を与えてしまうケースです。診療の一連の流れとして、レントゲンの設定や印象採取、診療補助などがありますが、新人の場合はその全てに不安を抱えて補助に当たっていると言えます。失敗をしたらどうしよう、また怒られたらどうしよう、と失敗に怯えて自分のことばかりしか考えられなくなっています。
例えばデンタルのセッティングの時、上手に撮ろうと角度を気にするあまり、苦しそうに口を開けている患者様に気が付かなかったり、無理な態勢でも平気で何度もやり直す衛生士がいます。また、患者様の口を触る時に、患者様の唇が乾燥して切れているのに引っ張ってしまったり、ミラーが歯ぐきに当たって痛い思いをさせてしまう、という事例を良く見かけます。いずれの場合も、衛生士が少し視野を広げれば防げる事例ばかり。余裕のない対応が患者様に不快感を与えてしまうのです。
粗雑な対応をしてしまうことは、新人に限らずベテランでもあり得ることです。そしてそれは、ほとんどが忙しい時間帯に見受けられます。予約が詰まっている場合、いつまでも一人の患者様に診療時間を費やすことはできませんよね。しかし、調整の難しい仮歯などなかなか時間通りに終わらない場合もあります。
そんな時、余裕を持てる場合は問題ありません。しかし、多くの衛生士が焦りを感じるはずです。『早く終わらせて次の患者様を入れなければ』という焦りから、『まだ当たる気がする』と違和感を訴える患者様に対して『もう当たっていませんから』と言い放ってしまうケースも稀にあります。一度そのような態度をとられると、患者様は言いたいことを言えなくなってしまいます。そしてその後も鬱憤は溜まっていき、結果的には転院の引き金となってしまいます。
いかがでしたか?接遇が良い歯科衛生士とクレームを受ける歯科衛生士の違いは『気持ちの余裕』です。余裕がないから粗雑になり、余裕があるから目の前のこと以外にも気を配れるようになるのです。患者様に一番近いからこそ、歯科衛生士の対応は歯科医院の評判を左右する重要な要素。今一度患者対応について見直す機会を設けてみてはいかがでしょうか。
また、歯科衛生士が気持ちにゆとりを持って仕事に取り組めるよう、歯科医師を含めたスタッフ間のコミュニケーションの充実も外せない要素です。スタッフも患者様も居心地の良い空間を作ることで、安心して通院できる歯科医院を目指しましょう。