接遇・おもてなしレター
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<接遇インストラクターが身につけておきたいスキル>
前回のコラム「接遇インストラクターの育て方」に続き、今回は、接遇インストラクターとして選ばれ、院内教育を推進していくためにふさわしい人材になるためのステップをご紹介したい。
正しい接遇のスキルや考え方をインストラクターが院内の職員に教育・指導していくためには、接遇インストラクター自身が、正しい接遇知識と高い接遇スキルを身につけていなくてはならない。
具体的には、次の3つのステップを踏むことができた人材をインストラクターとして選抜し、院内教育を推進していく役とするべきである。
接遇とはどのような要素から構成されており、なぜ医療機関に接遇が必要であるか、という接遇の基本に関するポイントを抑えた接遇の基本ステップ。同僚や部下からの接遇に関する質問に対して明確に回答でき、想定した事例におけるワークショップ等で、参加者の模範としてロールプレイング対応ができるレベル。
ステップ1で理解した正しい接遇の知識や考え方を現場の業務において自ら実践することができる接遇の応用ステップ。自身の部門や職種における接遇の実践だけではなく、他部門・他職種の現場においても、想定した事例に対応できるスキルを身につけられたレベル。
ステップ2までの内容を高いレベルで身につけ、自ら実践できる接遇レベルを持った上で、他者(同僚・部下)に教える(指導する)ことができるステップ。接遇知識に乏しい職員に正しい内容を伝え、理解を促し、現場において接遇を実践することができない部下を指導し、接遇スキルの向上へ導くことができるレベル。
接遇の院内教育がうまく機能しない多くのケースでは、【ステップ1】~【ステップ3】の段階をきちんと踏んだ人材を選抜できていないことがほとんどである。
例えば、外部から接遇講師を招き、【ステップ1】の基本編を受講したスタッフからインストラクター候補を選抜し、【ステップ2】の実践するスキルを身につけていない人材を指導役として推進してしまうのだ。仮に、【ステップ1】【ステップ2】の内容を高いレベルで身につけた人材をインストラクターとして選抜しても、「分かる」「できる」スキルと、【ステップ3】の「教えるスキル」は全くの別物であるため、自分は「できる」が、他者は指導できない・育成できない、という問題が起こってしまうのである。
そのため、私たちが接遇インストラクターの育成をお手伝いさせていただく場合には、これらのポイントを踏まえたうえで、誰をインストラクターにするべきか、という候補者の選抜から一緒に行わせていただく。
このように、接遇インストラクターを選び、院内の教育を推進していく場合には、インストラクターの選抜と育成が大きな鍵を握っている。今後、院内で接遇レベルの向上を図っていく際には、この点を踏まえて体制を整えていくことを推奨したい。
以上、これまで全9回にわたって「病院内における接遇研修の進め方」についてご紹介してきた。今後の院内における接遇教育を推進していく際の参考にしていただければ幸いである。