接遇・おもてなしレター
接遇・おもてなしレター
病院・クリニックにおける接遇研修の進め方を考える3
接遇研修の進め方2「病院に「おもてなし」は必要か」「おもてなしとマナーの違い」に続き、今回は、「マナーとは何か」「おもてなしはマナーの応用スキル」についてご紹介させていただきます。
では、マナーとは、一体何なのか、そこから考えていただきたい。多くのマナー・接遇研修で受講生の方々へ「マナーとは何でしょう?」と質問を投げかけると、「自分が恥をかかないために必要なこと」という答えが返ってくる。きっとその考えの裏には、フランス料理をいただく際のナイフとフォークの使い方からイメージする「テーブルマナー」を想像し、マナーを非日常のものとして捉えているのではないだろうか。一方で、この回答をした大半の方が、私たちの研修を受けてどのように変化するかというと、
「マナーは身に付けなくては損!」
「マナーを日頃の業務で取り入れたほうが得だ!」
という考え方に変わっていただける。
では、どのように私たちが「マナーとは?」という要素をお伝えしているかというと、難しいことではなく、まず、「マナーとは相手のためにするものである」という点からお伝えする。
つまり、自分が恥をかかないために知らなくてはいけないもの(=自分のためのもの)ではなく、相手を思いやっている気持ちを伝えるのがマナーである(=ベクトルを相手に向ける)ことを理解していただくことで、結果的に自分に対しても患者様からの好感につながり、ありがとうという言葉をいただけるようになったり、何か患者様にお願いをしなくてはならない場面でも一度で聞いていただけたりと、相手のために行ったマナーが自分にも必ずつながってくるということをイメージしていただくのだ。この考え方を理解していただいた上で、各職種に合わせた研修でワークショップを取り入れ、
「マナーを日頃の業務に加えていきたい!」
というモチベーションにつなげていくのである。
では、先ほど述べた元CAが考える「おもてなし」と「マナー」は一体どのように違うのか。医療業界に取り入れるべきものは、「おもてなしの考え方」「マナーの基本」、どちらであろうか。
実は、航空業界というサービス業に長く勤務していた経験と、サービス業に従事する方へ向けて多くの講演と研修を行ってきた私たちは、どちらも必要であると考えている。ただ、マナーの基本をきちんと身につけ、一人前の医療人として通常業務に取り入れられるスキルが身についてからでなければ、「おもてなしスキル」を生かすことは難しい。つまり、「おもてなし」とはマナーの応用編に位置づけられるものであるのだ。
なぜなら、「おもてなし」には、その人の「心のあり方」が伴ってくるため、マナーの基本を身に付けた上で、相手の年齢や診療科目、診察目的等に合わせた会話や接し方を工夫するなど、その場に合わせた応用度の高い対応スキルが求められるからだ。「おもてなし」という行為が自然と提供できるようになるためには、マナーの基本を学び理解した上で、応用として実践できるレベルに到達するまでの時間と教育者のスキルが必要になる。
ここでは次回から、マナーの基本編を一部ご紹介させていただきたいと思う。