接遇・おもてなしレター
接遇・おもてなしレター
病院・クリニック・歯科医院など医療機関が接遇研修を実施する際の講師選びのポイントをご紹介いたします
「せっかく接遇研修を実施したのに、満足度が低かった」「研修後の接遇改善が見られなかった」というご相談を受けることが増えてまいりました。接遇研修を企画するのであれば、鍵を握るのは、「講師」です。
そこで、病院やクリニックが接遇改善を目的に、研修を実施する際に、どのような視点で講師を選べばよいのか、そのポイントをご紹介させていただきます。
「接遇講師」「マナー講師」と呼ばれる方は多くいらっしゃいますが、実は、得意な分野や研修のスタイルには特徴や違いがあります。それらを確認した上で、実施を考えている接遇研修や接遇改善の計画に合った接遇講師を選んでいただきたいと思いますので、参考にしていただければ幸いです。
病院・クリニック・歯科医院が接遇研修を行う際には、その接遇講師の「医療業界における実績」を確認したほうが良いでしょう。
接遇・マナーは、「サービス業」全般で求められる共通スキルです。そのため、ホテル・飲食店・ウェディング・小売店など様々な業界でマナー研修を実施し、活躍している講師の方がいらっしゃいます。
しかし一方で、医療業界には医療業界ならではの特徴や独自の風土があります。医師、看護師、リハビリ、薬剤師をはじめ、国家資格が必要な職種や医療保険を使って来院される「患者」様への対応など、一般のサービス業とは異なる仕組みや制度があります。
一般企業の現場で求められる「おじぎ」「笑顔」「あいさつ」と医療現場でのそれらは全く同じものではないことが多いでしょう。
できるだけ「医療業界」における実績が豊富で、病院やクリニックなどの医療現場で接遇の指導を行った経験がある講師を選び、研修を含めた接遇改善を相談されるほうが良いのではないでしょうか。
接遇研修の内容は、担当される講師の方にお任せされる医療機関が多いようですが、研修の満足度や充実度は、「ワークショップ(ロールプレイング)」や「病院の情報(どれだけ病院のことを知っているか)」で評価が分かれることがあります。
「ワークショップ」は、職種ごとに患者様対応を想定した接遇のロールプレイングというイメージですが、これが導入されているかいないかで、受講者の満足度や研修後の接遇スキルの定着に差が出てくることがあります。ワークショップがあると、受講者にとって接遇スキルをどのように活かすべきかという「実践」のイメージが持ちやすくなり、研修後の改善と接遇スキルの定着が変わってくるからです。
一方で、配布資料やレジュメの準備もなく、座学中心に研修をされる講師では受講者も飽きてしまい、研修の満足度が下がってしまうでしょう。受講生を委縮させてしまう指導態度のマナー講師による研修も評判や満足度が高くなかったという声をお聞きすることがあります。
そうではなく、実際の「医療の現場」に即したシチュエーションを想定したワークショップを導入し、受講者がロールプレイングによって接遇を実践するイメージを持ってもらえる内容のほうが受講者の満足度が上がり、その後の接遇改善・接遇スキルの定着につながる確率が高いでしょう。
また、もう1つのポイントとして、「病院の事前情報(どれだけその病院のことを知っているか)」によっても研修の充実度が変わってきます。病院の基本情報はもちろんですが、課題を感じている点や実際に院内で行ったクレームなどを事前に共有することで、ワークショップに織り込む内容や、具体的な接遇改善を研修で実施することができるはずです。
これらのポイントを押さえ、鍵になる「ワークショップ」を交えて、質の高い研修を実現できるよう慎重に計画を立て、講師選びをされてはいかがでしょうか。
患者満足度向上のために接遇改善を行うのであれば、1回の接遇研修で長期的に改善効果を持続するのは難しいかもしれません。もちろん、研修の内容次第では、一度の研修受講で翌日から改善が見られる職員も出てきますが、それが「長期的」に「持続・定着」できるかどうかは、個人差があるはずです。
そこで、研修で受講した接遇スキルを実践し、定着させるために、研修を担当してくれた講師が研修後も何らかの形でフォローを行ってくれるかどうかも確認しましょう。
1回の研修企画は決して安い金額ではありませんので、接遇を改善するために研修を実施するのであれば、その受講効果が持続するような仕組みと流れを作っておきたいものです。
そうでなければ、定期的に接遇研修を行っているが、いつまで経っても接遇の改善が感じられない、患者様からのクレームが減らない・・・という状況に陥ってしまいます。
そうならないために、例えば、研修後にその講師や接遇インストラクターが現場に入って、研修で学んだ内容を職員が実践しているかをチェックするような仕組みが最適です。研修後に、OJT型のフォローを行うことで、研修で学んだことが現場で活かされ、スキルとして定着させることが可能となるはずです。
1回の研修という「単発」で職員の接遇改善を考えるのではなく、「接遇研修」と「研修後のフォロー」をセットにして、研修受講後の効果を持続し、抜本的な接遇改善を試みるという視点で講師にご協力をお願いしたほうが良いのではないでしょうか。
院内で接遇研修を企画する際、どうしても「予算」の制約があることが多いでしょう。ですが、これまでに研修のご相談を受けている中で、接遇研修がうまくいかなかったケースとして多いのは、「予算が限られていたため、費用の安い講師に依頼をして、内容を任せてしまった」というものです。
「費用が安い」=「講師の質が低い」
という図式が必ずしも成り立つわけではありませんが、これまで数々の病院・クリニック様からのお悩みをお聞きしている中では、「とても安かったけど、受講者の満足度がとても高かった」ということはほとんどないようです。
逆に、費用が高ければ講師の質が高い、という図式が成り立つとも限りませんが、予算ありきの価格だけで講師選びを行ってしまうと、研修そのものの満足度が低かったり、研修後の接遇改善が見られない、ということにつながってしまう可能性がありますので、その点は注意して講師選びを行われたほうが良いでしょう。
※また、研修の費用とも関連しますが、お付き合いのある「製薬会社(MR)」や「銀行(金融機関)」にマナー研修を依頼されるケースも多いようですが、お付き合いや予算制約ありきでご相談されている場合は、研修の満足度が高くない傾向にあるようですので、上記1~4のポイントを考慮して講師選びをしていただければと思います。
最後のポイントは、依頼される「接遇・マナー講師」にサービス業での勤務経験や現場での指導経験があるか、という点です。できれば、1.でご紹介した「医療業界での実績」と「病院・クリニック内など現場での指導経験」がある講師のほうが、医療業界の事情が分かったうえで、より具体的な研修内容を提供してくれるでしょう。
医療業界でなくても、お子様から高齢者まで様々な年齢層に対する「おもてなし」「サービス」の勤務経験があれば、医療業界に共通する点と異なる点で応用を利かせ、柔軟で多様性のある研修内容を組み立てられると考えられます。
また、講師の年齢も研修の評価や受講者満足度のポイントになります。仮に、研修を受講する職員に新入職員を含めて、20代・30代など若い方が多い場合には、歳が離れたベテラン講師より、受講者の年齢層と近い若い接遇講師のほうが、受講者が耳を傾け、熱心に受講するという良い傾向が見られることが多くあります。
一方で、講師の年齢に関係なく、研修は受講者との「雰囲気づくり」が重要であり、それが研修の満足度を左右しますので、「ファシリテーション力(進行スキル)」を備えた講師であれば、受講者の緊張をほぐし、ワークショップも盛り上がり、積極的に研修を受講する雰囲気を醸成することができます。座学中心の講義であれば、高いファシリテーション力は求められないことが多いと思われますが、ワークショップ・ロールプレイングを織り交ぜた研修を行う際には、重要なスキルとなりますので、得意としている研修のスタイルや他医療機関での満足度・アンケートなどを確認することをお奨めいたします。
以上、5つの点について講師選びのポイントをご紹介してまいりましたが、
様々な医療機関からの接遇研修や講師選びに関するご相談をお受けした中で共通している点をお伝えさせていただきましたので、今後の「接遇講師」選び、および、院内スタッフの接遇改善活動を行う際の参考にしていただけましたら幸いです。