接遇・おもてなしレター
接遇・おもてなしレター
病院・クリニックにおける接遇研修の進め方を考える
今回から数回にわたり、医療機関(病院・クリニック)の好感度・接遇レベル向上を実現するために、どのように接遇研修を進めていけば良いのか、考えてみたい。
「おもてなし」と「ホスピタリティ」は同様の意味で使われているが、「ホスピタリティ」の語源はホスピタル(病院)にあることを皆さまはご存知だろうか。高級ホテルでの「おもてなし(=ホスピタリティ)」を想像してみよう。まさに安心感ときめ細やかな気配りに包まれる心地良さと癒しの空間が想像できる。では、皆様の病院では患者様に安心感と心地よさを与えることができているだろうか?
「ホスピタリティ」の語源を思い返してみると、実は病院こそが「人に癒しを与える場所」であるべきではないかと私たちは考えている。ぜひ、「ホスピタル(病院)」の語源に戻り、患者様を癒す場所で働かれていることに誇りを持ち、業務として仕事を捉えるのではなく、「使命感」「やりがい」を心に秘め、自信を持って働いていただきたいと願っている。
まずは、私たちが働いていた飛行機の中でのエピソードから「おもてなし」とは何であるかを考えてみたい。例えば、機内でお弁当を召し上がっているお客様がいたとする。客室乗務員のサービスマニュアルにもあるように、お食事を召し上がっているお客様がいらっしゃった場合、どのような時でもお茶とおしぼりをお持ちするという基本的な接遇を私たちは学んでいる。ただ、まもなく着陸をするというタイミングでお客様が食事を召し上がろうとしていたら、皆様ならばどのような対応をされるだろうか。
まず、機内では着陸に備えて、お弁当を置いているテーブルを残り10分程でしまっていただく必要がある。要するに、10分間で召し上がっていただかなければならない。そのような時にも頭をフル回転させ、どのようにすればお客様にご不憫な思いをさせずに少しでもゆっくりとお食事をしていただけるかを考えおもてなしに相違工夫をする。同じお茶を出すにしても、紙コップにストローをつけてお出しする冷たいお茶ならば問題はあまりないのだが、寒い季節には、温かいお茶をお出しした方が喜ばれる。
だが、いつも提供している熱々のお茶ではなく、「冷まさずに、すぐに召し上がることができる少しぬるめの程よい温度のお茶」を客室乗務はお出しする。これが、相手の状況を配慮した「おもてなし」である。
ただし、ここで気をつけなければならないことは、お客様がすぐに召し上がっていただきやすいことを考えて、少しぬるめのお茶を出させていただいた旨をそのお客様にお伝えする、ということである。もし、この言葉がけがなかった場合、お茶を出されたお客様は、(何でこんなにお茶がぬるいのだ!)と不満を持たれてしまい、クレームに発展してしまう可能性がある。しかし、なぜ少しぬるめのお茶をご提供したか、それがお客様の状況を考えての行為であることをお伝えできた場合には、そのお客様は納得してくれることだろう。
つまり、おもてなしには、目の前にいる相手を思っての創意工夫が込められているのであるが、その工夫を凝らしたことを、きちんと相手に伝えなければ、クレームにも繋がってしまう恐れがあるのだ。つまり、相手を気遣った行動とその言葉がけ次第で、良い印象・悪い印象を与える分かれ道となるのであり、これこそが「おもてなし」であり、それを支える接遇という行為なのだ。