接遇・おもてなしレター
接遇・おもてなしレター
元客室乗務員の接遇講師がお届けするおもてなしレター
今年も暑い夏が終わろうとしています。
皆様におかれましてはお盆休み・夏休みで家族と一緒の時間を過ごされ、またお仕事に力を入れておられる事と思います。
さて、今回は接客業に欠かすことが出来ない「おもてなし」についてお話したいと思います。
「おもてなし」とは一体何でしょうか?
文字で「おもてなし」と聞いてもピンと来ないと思いますので、具体的に想像してみてください。
週末、日頃あなたがお世話になっている上司を自宅に招くことになりました。さて、あなたならどんな「おもてなし」をしますか?
お茶菓子の用意?来客用のスリッパをお出しする?食器類の準備?その前にお部屋のお掃除、トイレのお掃除、自宅までの道のりのご案内は?等、沢山のおもてなしのアイデアが浮かぶのではないでしょうか?
お茶菓子一つにしても、相手の好みや季節柄で選択も変化してきますよね。
飲み物も自分はコーヒー愛飲家で家にコーヒーさえあれば十分なのという方も、来客がコーヒーが苦手で紅茶好きとあれば紅茶を準備しておく。
相手の事を想い、形にする事。それが「おもてなしの心」だと思います。
フライトでは毎日、毎便、初めてお会いするお客様をもてなすCAにとって、常にお客さまを想い、何かして差し上げられる事はないか気にかける精神が必要不可欠であるという事がお解りいただけるかと思います。
何年も前の話になりますが、今頃のような暑い夏の日のフライトでの出来事です。
私はCP(チーフパーサー職)で乗務しておりました。
搭乗中、黒色のスーツを着用された50代くらいの男性と目が合い搭乗の御礼を申し上げると、そのお客様が白い布に包まれた箱が入った紙袋を胸の高さで抱えていらっしゃるのが目に入りました。
一目見てそれが遺骨だということが私には解りました。やがてキャビンのCAからこのお客様について、「通常は緊急時を想定し衝撃防止姿勢をとる為、脱出の妨げになりうる手荷物はOHS、又は前の座席の下に収納して頂きますが、今回はお客様のお膝の上でお持ちいただく事になりました。そして上空にてベルト着用サインが消えた後、隣の窓側の席にお座り(お置き)頂きます」と報告がありました。
上空にてこのお客様のドリンクサービスを担当させて戴いた私は、「今日は景色が綺麗に見えていますね」と声をかけたところ、「元気になったら一緒に旅行に行こうねと話していたんです」とお話になられました。
私は「宜しければ、お連れ様も何かお召し上がりになりませんか?」と尋ね窓側の座席テーブルを出し、冷たいお茶を置かせて頂きました。
忙しい搭乗中、初めてお目にかかるお客様の心情を瞬時に察する事が出来たキャビンのCA。目に見えているのは紙袋の手荷物でも、こちらのお客様の立場に立てば決して手荷物ではなく「大切な人」だと確信したこのCAの対応こそが「おもてなしの心」だったのではないかと深く感じる事例でした。
皆さんにこの心が通じる事を祈っております。
他人に興味を持ち、小さな事に気付く「おもてなしの心」を今後も磨き、日々の業務に生かしていただければ嬉しく思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。